…挑戦なのだが。
やはり新地開拓は緊張するもので、僕は新聞部部室前にて立ち往生をしている。
最初の一歩は脈がやけに激しくて、鼓膜を打ち鳴らしうずまき管を血流の音で満たしていく。


「(折角、入部届を書いたのに…。部室に入れないなら元も子も無いじゃないか…。)」


意気地の無い自分に嫌気が差してくる。
項垂れ肩を落とし、深い哀愁の篭った溜め息を吐き出した。


「(挑戦するなんて意気込んでおいて…、情けないなぁ。)」

「ちょっとそこ退きなさいよ!!」


突然横から伸びてきた手と勢いのある明るいソプラノの声が降り掛かった。
女子生徒だ。
あれだけ僕が物怖じしていた扉を軽快良く開いて彼女は部室へと足を踏み入れた。


「部長ッ!!良いネタ仕入れましたよ!来月はこのネタで記事を飾りましょ!!!」


肩程に伸ばされた黒髪の彼女は、手に小さなメモ帳を持ち頭上に掲げた。