頭上で太陽が嗤う。
陽炎が大地を揺らめき手の届く距離が水面の如く畝った。
学生服の下を皮膚から溢れ出た「汗」と言う不快極まりない冷やかな液が伝う。
息が上がる。整える為に深く空気を吸えども噎せ返る熱さが喉を撫でるばかりだ。
脳が水を欲するも体がそれを拒む。何もこの体に与えたくない。与えて何かを得る事こそが罪な様な気がしてならない。

人々が列を作り行と成して連なる。
黒い列だ。禍々しくはない。
悲しさを誘う黒だ。
この黒は悲しみの象徴なのだ。
隣で涙を零している母も、その隣で溢れ出る感情を思い留めている何とも苦い顔の父も。
列の先へ続いている場所も。
黒で満たされ、黒で溢れ、黒の悲しみで覆い尽くされていた。

奥へと進んだ先。
今日初めての彼女の顔を見た。
いや、彼女の写真だ。溌剌とした笑みの写真。
幼い頃からよく近所で遊んだ…慣れ親しんだ笑顔。
目が触れた瞬間、どうにも視線を外す事が出来なかった。