1.春の匂い


 卒業って桜のイメージがあるけど俺の県は入学式あたりが桜が満開の時期だ。
小学校を卒業して1週間がたった。今俺は引っ越し最中だ。
引っ越しは少し寂しいような気がした。

だって12年間そこで育ったから。

 見馴れた町、お店、友達と自転車こいで冒険のような楽しさが溢れた遊びに行くときの道。
またいつでも来れるって分かっててもやっぱり少し悲しかった。
 俺はアパートに住んでいた。階段を駆け上がって3階へ。
鍵を開けたら、靴脱いでランドセル置いて、急いで2階へ行った。
2階は寝室でベッドがあった。雨の日は少し窓とカーテン開けて雨音を聞きなが
寝るのが好きで雨の日は欠かさない。そんなようなことをしていた。

 でも雨音を聴くと何故だか涙が溢れた。それは独り、しんっと静まりかえって雨音だけが聴こえるとき。
心が痛くて痛くて涙が止まらなかった。

ーーーー目を閉じるとそんなようなことを思い出す。

「優~?寝てるの?優?」
ふいに母が俺を呼ぶ。
「疲れているんだろう。ほらさっき友達と離れるとき泣いていただろう。自分が育った町から離れるんだ。
 少し寂しいだろう。寝ているなら寝かせといてあげよう。」
父が優しく言う。
「........................」
目を開ける。
母さん、起きてるよ。何? 父さん大丈夫だよ。 新しい生活楽しみだよ。

言いかけそうになった口をふいに閉じ、目も閉じる。
なんだかこういうときは寝ていたほうがいいのかもしれない。

何も言わないで、ただじっと、何も考えないで。....狸寝入りしてよう。
そう思ったけどなんだか闇が俺をさらう。閉じた目が重く感じた時には俺は眠りに誘われていた。


「....う。.......う。」
......ん?何だ?
「......う。...優。起きて。」
誰かが俺を呼んでいる。
この声は....母さんと父さんだ...
ゆっくりと目を開ける

「あ!優!おはよう。よく寝てたわね。」
「優、おはよう。引っ越し先の家に今ついたんだ。動けるか?
 優には2階の部屋をあげるからね。荷物片付けよう。」
「父さん母さんおはよう...。ありがとう。うん。片付けてくる」
そっと車から降りた。


大きな1軒家。父さんが言ったとおり、2階がある。
住宅街になってるところで、一番左側が空いてるのことで貸していただけたそうだ。

ふいに目を閉じる。
風がふわりと俺の髪をなびかせた。

やわらかな風に、匂いがあった。
これは...この匂いは...



「春の匂い。」


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~あとがき(のようなもの)~

初めまして、こんにちは。
読んでいただき、ありがとうございます。
何を伝えたいのか自分でも分かっていないのですが、
しっかり最後まで頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します。