桜が散り、青々とした若葉が茂る季節。


委員会へと向かう廊下から、窓の外を眺めると、風に吹かれて葉がざわざわと騒ぐのが聞こえた。


2年生に上がったばかりだというに、高校生の青春は短いものだ。
もうすぐ春も終わりか。


「結城さんさあ」


窓の外へ向けていた視線を戻し、隣を歩く樹君を見た。
彼はこちらを見ていた。


「さっき何考えてたの?」


どうやら先ほど私が熟考していた事について知りたいらしい。純粋な疑問の目を向けている。


「別にー、どうでもいい事だよ」


「どうでもいいならあんなに考え込まないよね、俺が呼んだのも聞こえないくらいにさ」


そんなに知りたいのか。
特になんてことない事なんだけど。


「ちょっと恋愛について、ね」


いちいち隠すのも面倒くさかったので(そもそも隠す理由もなかったので)、答えてやると、樹君は分かりやすい好奇の目を向けた。


「好きな人がいるの?」


女子は恋愛話が好きだと言うが、こいつもそうなのだろうか?妙に期待のこもった声色で尋ねられた。


「私は…」