「結城さんってば……俺が何回呼んだと思ってるんだよ…」


「少しぼーっとしていたんだ、すまん」


「全く……」



私が反省の様子も見せない素振りで軽く謝ると、呆れた声を返すこの男は確か…


「で、樹君は私に何の用なんだ」


「……はぁ」


クラスメイトの樹勇人(いつきはやと)だ。成績はまずまず、人当たりがよく気遣いのできる男として、女子からの人気も高いヤツだ。学級委員にも任命される訳だ。


そして当の樹君は私を呆れた目で見て1つ溜息を吐いた。失礼なヤツだ。


「今日は委員会の日だよ、って伝えたよね」

「あ、ごめん忘れてた」


因みに私も学級委員だったりする。これでも成績は良い方だ。人望は多分、無い。

私は、いっけなーい、とふざけつつのそりと席から立ち上がり、開口一番に

「ほら、遅れるよ」

と樹君に言った。

彼は案の定、


「結城さんのせいだからね?」


とまた深い溜め息を吐いていた。