恋をした女の顔を見た。


頬をほのかに紅く染めて、そして俯き、目線を下方へと逸らした。

口元を手で覆い、彼女は一言こう言った。



「……そう。あの人が好き。」



彼女は苦しそうで、それでいて何処か幸せそうな顔をしていた。




あ、綺麗だな。




純粋にそう思った。

それと同時に心の中に穴が空いたような、そんな感覚を覚えた。

そういえば、私ってこんな顔した事なんてあったっけ。



こんな……こんな、



誰かを愛しいと思う人だけが出来る、この世で一番美しい顔を。