「射さってるよ、それ」 指の先は、お腹に…注射器か。 「忘れてた」 「忘れんなよ」 女は即答した。 ボクは、ゆっくり注射器を抜き取る。 「ユキくんって、薬物乱用?」 乱用なら、どれだけ気が楽か…。 「いや、普通に処方箋」 何、コイツ? 普通なら、誰もが思い、会話は途切れる。 だが、彼女(緋奈)は知っている。 ボクが“病気”であることを。