ネコという名の犬

 母親の両方の鼻の穴にはテッシュが詰められていた。どうだ!と言わんばかりだ。
 「………」

「のぶ君、お風呂入りなさい」
 その鼻のテッシュのせいか言葉が聞き取りづらい。
 「‥う‥う…ん、ちょっと待って!」
 「何が待ってよー!さっさと入りなさい!」
 「………」
 のぶおはうつむいたまま何も応えなかった。

 「のぶ君!何これ!?」
 「ん!?」
のぶおは、コロッケでドロドロになったポケットの事は忘れていた。

 母親はポケットを触り匂いを嗅いだ。
 のぶおは、目を閉じ眉間にしわを寄せ怒られると覚悟した。
 
「ん!?」
母親は、テッシュが邪魔で匂いが嗅けなかった…
 「………」

 母親はテッシュの存在を忘れていた。

 「ハックション!!」

テッシュが飛んだ。   
「………」
 そのテッシュは何処へ飛んだのかわからないくらい飛んだ。

 「キャン!キャン!」
 微かにクローゼットから犬が鳴いた。
 のぶおは、それをごまかすように咳払いをする。

 「ハックション!」
「キャン!キャン!」
のぶおは、咳払いをする。