同期の介抱を終えてから、上官の方に向き直った。
「まだ正式な婚約ではないのですが…申し遅れまして失礼いたしました」
「お前」
上官は低い声を出した。
「先ほどの俺の話、腹の中ではさぞ笑っていたのだろ?」
「とんでもございません」
風向きが怪しくなる。
「川辺の海軍の娘といえば、あの娘だろう。お前はそいつと婚約するという。」
上官はゆっくりという。
「…横取りとはまさにこのことだ。俺に恥をかかせて、その上あの娘を諦めろと?」
「そんな…」
「何を酒場で説教しているのだ」
間に入った人物がいた。
振り返ると、そこにいたのは主幹だった。上官は口ごもった。
主幹は「こいつは優秀だ。あまり無茶を言うな」といい、
その席から外れるように言った。
恨めしい視線を背中に感じながら、自分はその場を離れ、一つため息をついた。