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世の中が深刻になるにつれ、陸軍のなかにも緊張が高まった。
任務や訓練で忙殺されながらも、皆、週に一度ある酒盛りで発散させていた。
そこで、自分の上官がある女性にぞっこんだと言った。
「操を守ってるという感じがたまらんな。堅いが」
女癖の悪い上官なので、堅い女性に関心があることに軽い驚きがあった。
「そうでしたか」
自分は、適当に相槌を打ちながら酒をついだ。
「俺が話しかけたらすぐ俯いちまう。
男慣れしていない感じがそそるんだ。
海軍の名門の娘でな。」
海軍。真面目な娘。
引っかかるものがあった。