地鳴りが激しい。
もうここもダメだ。
間もなく敵兵が来る。
場所を変えなければ。
息を殺して周りの気配を探る。
__今だ!
私は決死の覚悟で次の岩場に向かって走る。
うまく陰に隠れることができた。
荒ぶる息を必死に殺して、別の場所を探す。
胸元をぎゅっと握ると、中の写真がクシャっと潰れたのがわかった。
胸元を開いて、そっと写真を取り出す。
既にボロボロになっているその写真には、優しい笑顔があった。
涙が出そうになる。
__ここで諦めてはダメ
自分に強く言いきかせ、奮い立たせる。
もう一度、会うんだ。
絶対に、生きて帰って、会うんだから。
胸元に写真をしまってから、私はまた走り出した。
焼きつくような想いを胸に、戦地を走った。


