喉が熱くなり、目がかすむ。


地面に雫がぼたぼたと落ち、砂の色が変わった。


全身の痛みを忘れて、這い続けた。



爆心地とみられる場所に着いた時、身体の全ての力が抜けた。



彼の遺体はどこにもなかった。

手榴弾は、彼の骨すら焼き尽くしたのだ。


そばにいた敵兵も跡形もなかった。


黒焦げの焦土をみて、煙をみて、手を伸ばした。




そして、

彼の優しい笑顔を思い出し、

彼の本気の涙を思い出し、

彼の静かな物言いを思い出し、



空を虚しくつかんだ指先を、

もう届かない指先をみて、

1人、慟哭の叫びを上げた。