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うだるような暑さ。

激化する戦争。

果てしない戦い。


そのなかで、救助隊がこない。

もう見限られたことが、嫌でもわかった。


疲弊しきったなか、敵兵に出くわし、俺は脚をやられた。

「置いて行け」

俺はすぐに言った。


「俺は足手まといだ。もう自由がきかない。置いて行け」

彼は首を振った。

「ばかやろう!」


俺は吼えた。

「戦地で情けは命取りだ!置いて行け!」

それでも、彼は言うことを聞かなかった。


俺は、彼の胸ぐらを掴むと、思いっきり顔を殴った。


「目を覚ませ!」

彼は、口の端から流れる血を拭うと、俺を殴りかえした。


俺の口の中も切れた。

ヒリヒリする。


彼は、何も言わず、俺をおぶった。

万が一の時のために、長剣を渡された。



彼は銃と手榴弾を持ち、

戦地の中でかき集めた僅かな銃弾を、目一杯詰め込んだ。


馬鹿だ。本当に大馬鹿だ。


彼の背中の軍服がボロボロなのをみながら、

今までの言葉が、頭の中をよぎった。



__生きて帰るぞ

__この闘いは、まだ大きな戦争の皮切りだ。命を無駄に落とさなくていい。

__未来のために。今は生きなければならない。

__歯を食いしばって生き伸びろ!

__お前だけは死なせない。



俺は、その背中に顔を埋め、小さく泣いた。