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月明かりが綺麗な夜。


すでに、隊員が俺と彼だけになっていた。


俺と彼は、殆ど尽きた食料を漁りつくし、しばらく無言の時間を過ごした。


ふと目をやると、彼はまた何かをじっとみていた。


俺は、隣にいって覗き込んだ。

彼は、今度は観念したようで、隠さなかった。


それは、くしゃくしゃになり、血と汗で褪せている、写真だった。


先ほど、彼が胸を抑えていたのを思い出した。

気分が悪いのではなく、この写真を握っていたのだ。


よく見ると、人が写っていた。

生真面目で、でも根が優しそうな、写真の目線が硬い女の人だった。


「二世を誓った仲なんだ」

写真を見ながら彼は口を開いた。

彼自身の話をきくのは初めてだったので、とても新鮮だったが、

「…恋人がいるのに、こんな戦場に来ちまったのか」

どうしようもなく切なさがあふれた。


この隊は、半端者の集まりだ。

上官に睨まれた者の掃き溜めとも言われていた。

つまり、この戦争で一掃されようとした者の集まりだった。

「何かをやらかしたのか?」

「え?」

「上官の、何か気に触るようなことをしたのか?」

あぁ、というと、彼は珍しく顔を歪めた。

「…上官が、惚れていた女の人だったらしくてな」

俺の息が一瞬止まった。

「…そんな…」

そんな理由で、こんな所に来てしまったのか。

つまらない嫉妬心のために、こいつは恋人と離れ、死の戦地に流されたのか。


めちゃくちゃだ。


「仕方のないことさ。運が悪かった。」


「運も何もねぇよ!そんなクソ野郎、ぶっ飛ばしてやらねぇと…!」

「優しいな」

意表を突かれて、はぁ?ときき返す。

「俺のことで、そんなに怒ってくれる」

「お前なぁ…」

はあぁ、とため息をついた。

「本当に、お人好しにもほどがある」

彼は、苦笑した。