隼人と別れて帰ろうとすると、朝陽さんの車が目の前に停まった。


え、どうして、時間よりかなり早い。


車の中から葉山さんが出てくる。


「社長が迎えに来れなくなったので、私がお迎えにきました。」


そうなんだ。


でも、今日はその方が良かったかも知れない。


「顔色が悪いようですが、大丈夫ですか。」


大丈夫だと答えた。


後部座席に座り、思わずため息をついてしまう。


「疲れましたか。」


いえ、大丈夫だ言うと、社長から電話ですのでと、車を道路脇に停めた。


はなさんに変わりますと言われたが、寝たふりをする。


今は朝陽さんと話したくない。


話せば、中島さんの事を聞きたくなるし。


携帯に朝陽さんから着信があったが、出なかった。


本当にいくじかない。


本当の事を知りたい癖に、聞くのが怖いのだ。


簡単に結婚を考えた自分が恥ずかしい。


「社長は今日、中島さんと別件で出かけていましてので、はなさんは大変でしたね。」


中島さんと朝陽さんが一緒だなんて、聞いてない。


どうして、教えてくれたなかったの。


教えたくなかったのかも。


思わず声に出ていた。


「朝陽さんと中島さんは恋人同士だったのですか。」


少し間が空いて、そうでしたねと葉山さんが答えた。


やっぱり、大人は狡い。


私が子供だから、余分な事は話さなくても良いと思ったんだ。


朝陽さんなんか嫌い。


顔も見たくない。


その後、葉山さんが何かを話していたが聞いてなかった。


そのままふて寝を決め込んだ。


朝陽さんと本気で結婚しようだなんて、本当にバカだな。


朝陽さんが本気でそんなことを思う訳がないのに。