「……またな、くらい言ってよ」


一方的に切られたスマホを見ながら、泣きそうになる。

彼の好きな人を、私は知っている。 彼から直接言われたわけじゃないけれど、きっとそうなんだろう。 だって、彼はわかりやすい。……あの子と同じで。

私だけじゃない。 わかりやすい二人の恋心にみんなが気付いて、二人を近づけようとしている。 だけどその度に彼女は、私の顔色を横目で伺いながら「ちがうから」と弱々しく否定するのだ。 私がそうされて、どんな気持ちになるか考えもせず。


なんで、なんで彼女なんだろう。いろんなどす黒い感情がごちゃ混ぜになって一気に押し寄せてくる。息が詰まりそうだ。

昔は細いというよりガリガリで棒きれみたいだった。オシャレにも男の子にも興味がなくて、いつだって絵ばっかり描いているような子だった。

私のほうが、全部先だった。女の子らしいねと言われるようになったのも、オシャレに興味を持ったのも、料理をするようになったのも、男の子に告白されたのも! ……彼を、すきになったのも。

全部、全部、私が先だったんだよ。それなのに、どうして。どうして全部持っていっちゃうの。


今だって、私は彼女より必死に努力をしている自信がある。 可愛くなるために、彼に少しでも振り向いてもらうために。

それなのに彼女は、先にスタートを切っていた私をゆうゆうと追い越してしまった。がむしゃらに走っていた私になんか見向きもしないで、あっさりと。