私は、元は小国の貴族だった。大切に育てられてきたが、侵略によって一家は追放された。

たどり着いたのは、元の国より貧しい小国だった。
母が、貴族であったことは忘れろと言った。そして朝から晩まで死ぬ気で働いた。一方私は少しの時間だけ学校に行っていた。

貴族だった頃に予習していたため、少しの時間でも理解できた。
貴族だったことを知らない先生や同級生はそれを不思議に思っていた。

母が頑張って働いてくれたおかげで通えている。

しかし、本当は戦いたかった。

私の国を裏切った国が侵攻してくる。この国には優秀な兵士がいるのだから、優秀な指揮官がいれば勝てるかもしれないと思っていた。

残念ながら、私は優秀な兵士の仲間入りはできない。
元貴族だから、外にでて体力をつけることもしなかったので、とても弱かった。

連日重いものを運んでも細いままの腕を見ながらため息をついていた。

結局、軍に援助物資を運ぶ仕事に就いた。少しの間だが学校に通い、優秀な成績を修めていたので歓迎された。

任されるのは貧弱な私でもできる、仕分けや書類を扱う仕事で、この国を守る人に協力できる。天職だと思った。


二年間は戦闘に巻き込まれることもなく平和に暮らしていたけど、小競り合いが発展して大規模な戦闘が始まっていた。
兵士が足りなくなり、体力のない私も後方支援に駆り出された。

慣れない輸送作戦は失敗することも多く、その度にもとの仕事に戻りたいと思った。
けど、支援物資を見てありがとうと言ってもらえると、もっと頑張りたいと思った。


そして後方支援を続けていた私は、とうとう戦闘に参加することになった。

上官は、優秀な隊員ばかりだと言った。安心させようと思ったのかもしれないが、足手纏いになりそうで嫌だった。

隊長が行ったテストで、使い物にならないことがばれた。
学校に通っていたから参謀たちの輪に入れられたが、教科書通りのことしか言えず、結局駄目だった。