「…何」



部屋に入れば、制服のネクタイを締めていたチカが不機嫌そうに呟いた。




…うん、やっぱり。


予想してた通り、チカの態度は一晩では変わっていない。




「何って失礼だなー。折角迎えに来てあげたのに。ていうかチカ、もう早起きバッチリだねっ」



少し。ほんの少しだけ期待してたから、その分ちょっと残念だったり。





「よし、制服に着替え終わったら次は朝ご飯食べに行くよ!」



私の感情が悟られないように、必死で元気に振る舞った。





「じゃ、私は先に学校行きますね!」

「あら可奈子ちゃん。もう行くの?」

「はい。じゃあ行ってきますっ!」

「いつもありがとうね。気を付けて行ってらっしゃい」




チカママに挨拶をして、私は朝ご飯中のチカを置いて学校へ向かった。





これでいい。下手にずっといてもきっと逆効果だから。



奥原家を出た直後に涙が出そうになったのは、気のせいにしておこう。