「だってだって、あんなに可愛い弟いないじゃん!」

「実際は弟じゃないけどね」

「いいの!チカちゃんが生まれた時からずっと私が面倒見てるんだから!だから、チカちゃんは私の可愛い可愛い弟」



もうブラコンの域に達している自覚はある。


そのことは美沙もよく分かってるらしくて、最近は私の熱弁を「はいはい」と軽く受け流すことを覚えたようだ。





「でもまぁ、世間一般的に千景くんは "可愛い" ではないんだけどね」

「え?」


教室に到着した時、美沙のポロっと出た言葉に私は首を傾げた。




"可愛い" じゃない?


てことは何?チカちゃんは可愛くないって言いたいの!?




ワナワナと震える私を見て私の言いたいことが分かったのか、美沙は慌てたように訂正する。




「違う違う、そうじゃないって。私が言いたいのは、千景くんは "可愛い" じゃなくて "カッコいい" んだってことよ」

「へ?は?」


訂正された美沙の言葉に、私は更に訳が分からなくなってしまった。