「そっちにズレるのか…」

「え、何?」

「何でもない。可奈のアホ」

「アホじゃないしっ!って、呼び捨てするなー!」



いつもの勢いで大声を出して、あ、と思った。



よかった、チカちゃんのご機嫌治ってる。




横にいるチカちゃんの表情こそは笑っているとは言えないけど、雰囲気とか、ちょっとした仕草とかがさっきより柔らかくなったのを察知して安堵した。




…でも、さっきのは何のため息だったんだろう?


それを聞くとまたため息をつかれるんだろうから、聞くのはやめておいた。





「チカちゃん」

「ん?」

「今日はチカちゃんの部屋でゲーム三昧だからね!」

「は?勝手に決めんなよ」

「今決めたの!」




とりあえず今日は、チカちゃんのご機嫌取りのために一緒にいよう。




…なんて、自分がチカちゃんといたいための口実を作ってる気がしてならなかった。