* 千景 side **
長かったと、自分でも思う。
「ねぇ、チカ!あのクラスカフェやってるって。行こっ!」
俺の手を引いてはしゃぐ彼女に、クスッと笑みがこぼれた。
「可奈、転ぶよ」
「そんなので転ばないって」
可奈はそう言うけど、俺は本気で転びそうだと思う。
可奈のアホさ加減は舐めたらダメだ。
「わっ…!」
「ったく、」
───グイッ
繋いでいた手を、勢いよく引く。
「…ほら、だから言ったのに」
「まさか本当に躓くとは…、…っ!」
思わなかった、とでも言いたかったんだろうか。
それを、彼女は急に飲み込んで目を見開いた。
あぁ、そういうことか。
何故急にそんな驚いた顔をしたのか一瞬疑問だったが、直ぐにその理由が分かった。
転びそうになった可奈の手を勢いよく引いた俺。
そのおかげで、可奈の体は今異常なまでに俺に近い。
咄嗟に顔を上げた可奈と、俺の距離は、直ぐにでもキスできる距離だ。