あ、と思ってももう遅い。




チカは、あっという間に1学年の輪の中に入って行ってしまった。





「わ、凄いね」

「だろー?山田が描いたんだぜ」

「そ、そんな大した物じゃないよ…!」



ワイワイと楽しそうに話すチカ。





なんか、チカが遠くに行ってしまった気がしてならなかった。






友達に囲まれて楽しそうに笑うチカを、私は知らない。



学年が違うだけで、こんなにも当たり前の日常風景を見ることができないものなんだろうか。





いつか美沙から聞いたチカの周りからの印象。



"大人な雰囲気を持つ学校の王子様"



あの時は微塵も分からなかったそれが、今なら分かる。