「ちょっとだけだって。な?」

「いやっ」



怖くなってしまって、目一杯に涙が溢れてしまう。


けど溢したら負けだと思って、なんとかそれを止めた。







チカ。



チカ…!




心の中で、何度も呼ぶ。






すると。



─────ガシッ


「その手、離してくんない?」




私の思いが届いたのか、安心する人の声が聞こえたんだ。






「チ、カ…」

「ったく、このアホ」


呆れ顔で私の目の前に現れたのはやっぱりチカで。





「チッ、男いんのかよ」

「悪いね、こいつ俺のだから。さっさと失せてくれる?」



聞いたこともないくらい低い声で、チカはそう言い放った。