「君、これ買うの?」

「へ?」



すると、隣から声をかけられた。




見上げた先にいたのは、知らない男の人。


屋台の人でもなさそうなその人は、ニコニコ笑顔を浮かべている。





「どれがいい?俺が買ってやるよ」

「え、あ、大丈夫です…っ!」

「遠慮しないでー?その代わりちょっと一緒に来てくれないかな?」



優しい口調とは裏腹に、ガシッと手首を掴まれた。




「いっ…」



強くて、痛くて、思わず顔をしかめてしまう。





いくら私でもこの状況が危ないことくらい分かった。



けど、私の力じゃこの手は外せないし、周りの人は見て見ぬ振り。





「は、離してください…!」


試しに一度手首を動かしてみたけど、更にギュッと掴まれ抵抗出来なくなってしまった。