「別に。何となくアイツに先越されそうだなって思っただけ」
「え?」
「何でもねーよ」
チカの言ったことが上手く聞き取れなかったけど、とりあえずチカとのその約束には頷いておいた。
「え?千景くんと花火大会?」
「うん、そう」
次の日の朝。
私は、なんとなく美沙にチカとの約束───花火大会について話した。
毎年のことだから、中学からの付き合いの美沙とこの会話をするのは数回目。
なのに。
「ねぇ可奈子。今年は浴衣着なよっ!」
「へっ?」
今回初めて、美沙は私に浴衣を着るように進めてきた。
最後に浴衣を着たのだって、小学生以来だ。
それ以外はずっと私服できていたのに。
「な、なんで急に…!?それに今更浴衣なんて恥ずかしすぎるって!」
美沙の提案に慌てた私は必死に断ろうと手を横に振る。



