小さい頃から、何故かチカは一目見ただけで私の体調の変化に気付いた。
高熱ならともかく、微熱まで。
もう一度言うが、一目見ただけで、だ。
「帰るぞ、可奈。送ってくから」
「やだ」
「ワガママ言うな」
こういう時だけ私達の立ち位置は、チカはお兄ちゃんで私が妹に変化する。
過度な心配をして私を帰らせようとするチカに、私は首を横に振り続けた。
────キーンコーン…
ちょうどいいタイミングで予鈴が鳴ったのは、そんな時で。
1年生である、つまり2階上の教室に帰らなければならないチカは、その音に顔をしかめた。
「ほら、帰った帰った。私は大丈夫だから!」
そう言う私に、チカはムッとして言い返す。



