「うん…。その、真田くんの、ことなんだけど」
「…っ、」
無意識に、自分の体が反応したのが分かった。
…またその名前かよ。
可奈からその男の名前が出てくる度、俺の感情は黒いもので覆われていく。
「1年生にも…届いてるでしょ?私と真田くんのこと」
「…、あぁ」
あくまでも平静を装って答えるが、内心気になってしょうがない。
勇太の話によればただの噂らしいけど、それは俺が可奈本人の口から聞いたわけではないから。
「あれ、ただの噂だから。信じないでね」
チカには誤解されたくないから、と可奈は言った。
「私が躓いて転びそうになったのを、真田くんが助けてくれたの。それを他クラスの人に見られて、そこから噂に尾ひれがついちゃって…」
あはは、なんて苦笑してる可奈とは対照的にホッとしている自分。



