「龍」

「おお。来てたのか」

学校につくなり
カバンも置かず、龍の席に行った

「休み時間話しあるから」

「え。」

私はそれだけ言うと
少し不機嫌に横を通り過ぎた

授業なんて頭に入らない
ご飯なんて美味しくもない

龍が病気だなんて
考えたくもない

考えたくもない


ふと
龍の顔ばかり思い出す

笑ってる顔
照れてる顔
困ってる顔
楽しい顔
ふざけてる顔
本気の顔
怒った顔
寂しそうな顔
辛そうな顔
悲しんでる顔

龍は幸せな顔したことないね


治るのかな


龍。龍。龍…




「話ってなに?」

声がした方に顔を向けると
目の前に龍がいた

「病気ってなに?」

「え…」

明らかに動揺した顔だった
瞳が一瞬揺れたあと
また悲しい顔をした


「ごめんな。どうしても言えないんだ」

「深刻なの?どうして私に言えないの…。彼女なのに…」

「ごめんな。ごめん。これはどうしても言えないんだ」

「治らないの?」

「美波…泣かないで」

頬が濡れてた
それに気づいた瞬間
泣き声をだして泣いた

「美波…ごめんな…」

龍の寂しそうな声は
頭の中をこだました



「いいよ。大丈夫。無理しないでね!なんかあったら、なんでもするから!」

無理して笑った

自分の意思に任せたら
龍を悲しませてしまうかもしれない


私は気づいてしまった

あの夏祭りの日から
私の行動はすべて

龍を傷つけている

ということに。




だから胸に決めた




自分の欲は封印する
龍を悲しませないために









「龍。大好きだよ」

「俺もだよ美波。ずっと好きだよ」