魂が抜けたようになっているなよ子を
見つめて


チョチョシビリが口を開く。


「員子さんは確かに悪人かもしれない。

騙して服従させようとしたり
奴隷契約を強要したりして


人を傷付けたのは確かだから」


下を向くなよ子に向かって
チョチョシビリは優しく


さらに語りかける。


「でも員子さんはモデル事務所を
立ち上げようとして


必死だっただけなの。


いうことを聞かない女の子たちや
従業員を服従させるためには


恐怖で支配するしか
無かったのかもしれない」


「必死だったからって
何してもいいってわけじゃないと思うけど」


なよ子が口をとがらせてそう言うと
チョチョシビリは深々と頭を下げた。


「ごめんなさいなよ子さんの言う通り。

でもね
員子さんには芸能界で成功するという
夢があった。


事務所を成功させたいという気持ちは
本物だと私は思った。


だから私は悪い事と知りながらも
員子さんに協力したの」


チョチョシビリの頭を下げる姿を見て
なよ子は複雑な気持ちになる。


悪人にも悪事を働く理由というものがある。


そう思うと人の良いなよ子は
どうしても員子を憎み切れない。


なよ子は員子の姿を探して
こう言った。


「員子!許したわけじゃないけどさ!


私にごめんなさいって言ってくれたら
すこしは……あれ?あれれ?」