「じゃあ、行きましょうか」


そう言って員子が
蛇のような笑いを浮かべる。


「運命の部屋に」


なよ子と員子は
騒がしい店内を抜け


長い廊下を歩いていく。


店の裏は外の騒がしさが
ウソのように静まり返っている。


もしシャーペンを落としたら
カランコロンカラカラ……


と大きな音が聞こえるくらい
静かな廊下をなよ子は歩いていく。


心臓の音が
耳の裏でガンガンとうるさい。


緊張するなよ子。


手を握りしめ
唇をかんで歩いていく。


いつの間にか員子の手には
モップが握られていた。


「床が汚れたら掃除しなきゃね」


そう言ってまた員子は笑う。


「なよ子さん。血をまき散らして
床を汚しちゃダメよ」