「な、なんでもないよ」


一郎は下を向いて
ぶっきらぼうに言った。


なよ子は意味が解らず
一郎を見て首をひねる。



「じゃ、じゃあ」


一郎は逃げるように
倉庫の中へ走って行った。



ますます意味が解らない。


なよ子は首をひねりながら
校庭を横切って


校舎の中へと入って行った。



一郎となよ子が去った校庭。


強い風が校庭の砂を
吹き上げている。


しかし


のほほんと校舎の中に
入っていたなよ子は


まったく気が付ていなかった。


一郎となよ子の様子を
影から見ていた人物がいたことを。