「…千羅さん……あの、これ、どこに向かっているんですか…」


僕達が乗っているのは、馬車の荷台だ。僕が住んでいた街であろうものは、もう既に遠く消え始めている。


「今はブローカーの本部に向かってんねん。あと5分もすれば着くんちゃう?」


「着くまでは初めての外の世界を楽しんでください。山なんて、初めて見るんじゃないですか?」


落ち着いて辺りを見渡すと、確かに初めて見るものが沢山あった。


山も川も野生の動物も、写真でしか見たことがなかった。


「……あれ?なんか…あれ何ですか?」


後ろの方に、不自然な土埃が舞い上がっている。