ふと、自分の手元を見ると、そこにはまだ包み紙が残っていた。
くしゃっとなった包みの内側に黒い線がいくつか見える。
なんだろう。
この飴の包みの裏は白一色じゃなかったか?
気になった俺は体を起こして、包みを伸ばした。
すると、黒いペンで書かれた文字があらわれた。
その瞬間、驚きで体がかたまる。
息をすることさえ、忘れた。
どれくらいそれを見つめていたのか。
やがて、ゆっくりと息を吐きだすと、自分の頬が緩んでいく。
さて、彼女にはどう返事をしようか。
バレンタインの返事だから、ホワイトデーのほうがいいのか。
そこまで考えたとき、あるひらめきが浮かび、今度は口がにやっと歪む。
回りくどいことをしてくれた彼女にはちょっと意地悪して、このメッセージに気づかなかったフリをホワイトデーまでしてやろうか。
いや、俺が早く彼女とカレカノの関係になりたくて、ホワイトデーまで待てないかな。
もう一度、包み紙に目を落とした。
何度でも見てしまう、うれしい言葉。
『スキ』の文字がそこにあった。
【完】
→アトガキ。



