「あー、ついてねぇ」
部屋に入るなりかばんを床に投げつけると、ベッドに腰を下ろした。
安物の硬いベッドだけど、体は少し沈む。
それに合わせて、いや、それ以上に、肩と頭が深く下がった。
茶色の床板を意味なく眺めたあと、少しだけ顔をあげて、学ランの左ポケットから携帯を取り出した。
開いて、見るのはカレンダー。
今月、2月のカレンダーが表示され、14日だけ赤枠で囲まれている。
この赤枠は今日をあらわす。
今日が2月14日、バレンタインデーだと改めて確認して、ため息をつくと、体を大の字にしてベッドに寝転がった。
体が重く感じる。
男の俺にとって、今日は好きな子から本命チョコをもらえるかもしれない特別な日。
しかし、戦利品は、朝に渡された姉と母からの二つだけ。
学校も終わって、家まで帰ってきたというのに、肝心の子からはもらえなかった。
もちろん、俺だって家族以外の女子から義理すらももらえないほどではない。
そこそこ女子とも話すから、義理チョコの声はかかったけど、受け取らなかったんだ。