次の日。


一応約束だし、と九時に家を出ることにした。


歩けば三十分くらいで着くはずだし、遅刻するよりは早めに出たほうがいいよね。


コートにストール、ショートブーツにスカート……失礼にならない程度にお洒落して玄関の扉を開けた。


「……よぉ」


「えっ?」


そこにはいつも通りの微妙にダサい私服の涼ちゃんがいた。


「なになに何でいるの、私これから出かけるの、にっ?」


ぐい、と珍しく涼ちゃんが腕を引っ張って歩き出す。私は引きずられるようにしてついて行くことしかできない。


「お前が聞いてきたんだろ、暇かって。その通り、俺は今日暇だから一日中付き合え」


「だから用事があるって言って……!」


「その用事は、」


ぴたり、と涼ちゃんが足を止めた。


そのまま振り返って、鋭い眼差しで私を突き刺す。


「好きでもねぇ奴との無理矢理なデートは、そんなに大事か」