ふたりは少し不思議な変な子だった。




その日は冊子作りの仕事が終わらず、一人遅くまで残っていた。





「ねえ」





日が沈み暗くなってきた教室にふい静かな声が響き、思わずびくりと顔を上げた。





はじめて聞いたその声の主は、背中合わせに外を眺めている片割れに声をかけたらしく




私の事など気づいてもいないかのように喋り続ける。





「今、目の前に扉が3つある



一つは赤い扉



一つは黒い扉




一つは白い扉




どうする?」





私は首を傾げた。



片割れは何と答えるのだろうと手が無意識のうちに動きを止め、静かになる。




しばらく待っても片割れは答えず、




7時を告げるチャイムが鳴り響き慌てて立ち上がる。




帰ってからやればいいや、とコピー用紙の山を鞄に詰め込んで教室を出ようとしたとき





「扉には鍵がかかってるから




お前がいないとあけられねえや」




片割れの答えが聞こえて、でも足は止まらずそのまま階段を駆け下りる。





`鍵がかかってる'





意味の分からない質問と意味の分からない答え、





それでもなぜか胸の奥がじんわりとして、振り返った。