届くなら、あの日見た空をもう一度。


※※※

「かなちゃん!」

俺が中学に上がってから初めて迎えたある夏休みの日。

懐かしい、何度も聞いてきたその声が俺の名前を呼んだ。

その日は部活が午前中だけでさほど疲れていない体を、それでも真夏の太陽が容赦無く照り付け、立っているだけでも体力を奪われるような猛暑日だった。

うるさく鳴いていた蝉の声が急に遠くに感じ、いま聞いた俺の名前を呼んだその声が頭の中に響いた。

マジかよ……。

そう思った。

なんで急に。

今更になって。