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ベッドに潜りながら一向に眠気が訪れない頭の中で昼間の加藤の言葉が再生される。
『どこを見てるの?』
あれは一体どういう意味だ?
『私のことちゃんと見てくれてる?』
見てた。
乗り気でなかったとはいえ会話は普通にしてたはずだ。
だけど何を話してたかうまく思い出せない。
さっきまで目の前にいたはずの加藤の顔がうまく思い出せなかった。
健吾たちのことは思い出せるのに加藤のことがどうしても思い出せない。
覚えているのはトイレの前で言われたことだけ。
そうだ。
俺が加藤の目を見て会話をしたのはあの時が初めてだった。
ずっと上の空で適当に遇らっていた。


