「かなちゃん。部活終わり?お疲れ様」
なのねえが文庫本から目線を俺に移し目を細めながら声をかけてくる。
俺は鞄からさっき買ったジュースを取り出し一つをなのねえに渡した。
「またこんな所で読書かよ。暑くねえの?」
「くれるの?ありがとう。ちょうど喉乾いてたんだぁ。いただきます」
俺の質問なんか無視してなのねえの指が缶のプルタブを開け、そのまま缶を口元へと運びコクコクと飲み下す。
夕日が缶に反射してちらちらと光る。
たかだか百二十円のジュースを飲んでいるだけなのに、その光景はいままで見てきたどんなものより綺麗なものに俺の目には映った。


