届くなら、あの日見た空をもう一度。


美術室を出て廊下を早足で抜ける。

外に出ると昼間の太陽をたっぷりと浴びて熱を溜めたコンクリートと生温かい風に歩いているだけで汗が滲んだ。

夕方だっていうのになんでこんなに暑いんだ。

どうにもならない暑さに途中、家までの道を少し外れて自販機でジュースを二つ買う。

それを鞄に突っ込み早足になりながら近所にある小さな公園に向かった。

やっぱり。

小さな公園には不釣り合いな、申し訳ない程度に設置された東屋の中に彼女を見つける。

その人は俺が来たことなんか気づきもしないで手にしている文庫本に目を落としていた。

影が重なる距離にまで近く。

彼女はそこでやっと俺の存在を認識するんだ。