マンションのある駅の、反対側に看板を見つけ、比較的近くの動物病院に急患で飛び込むことができた。


待ち合いで、治療されるハナを待って、受け付け横のソファで祈るように手を顔の前に組んで座っていた私。


「やっぱりここにいましたか」


「…何しに来たんですか」


ドキドキする気持ちを抑えて、ふん、とそっぽを向く。


「何しにとはお言葉ですね。ハナはうちの猫ですよ」


「でももう、飼えないでしょう??私が引き取りましょうか??」


「引き払ってきましたが」


「はい!?」


驚いて顔を上げるけれど、涼しい顔で見下ろされる。


「帰るところなんてありませんよもう」


「えっ!?いや、あの。ひ、引き払ったって、私の部屋を勝手に!?」


「言いましたよね。雇いますと。住み込みで働いてもらいます」


「いやいや、っていうか、あの部屋はもう…」


「あそこはもういいです。父にも見つかってしまいました。他にも部屋はありますから」