ふう、とため息をつくと、


「あの父のやりそうなことです。身寄りない美人秘書と密会―――そんなことより」


掴んでいたLUCAの腕を投げるように離すと、私にすたすたと近付く。


「どうしてそうあなたは、僕を怒らせるようなことばかりするんですか??」


私を壁際に押しやると、逃げ場のないように肘で壁ドンされる。
至近距離で、


「こんな男といつまでも。いちゃいちゃしてんじゃねえ……目の前でキスまでしやがって」


心臓が波打つ。
こんなことさせていいわけない!!
彼には婚約者さんが。
結婚を約束した婚約者さんが。


「あっ、あなたには!!…かっ、関係ないじゃないですかっ!!放してください!!」


―――苦しい。


無我夢中で擦り抜け、逃げた。


ふっ、と落ち着いて上体を起こす。残されたふたりを見下ろして、じろりと睨む。


「…二度と彼女に近付かないで貰えませんか」


そこはかとない迫力に、黙って頷くしかできなかった。