「心花…」


洸亮さんのそのひと言で、事態が悪化した。
この人が、とLUCAの嫉妬心に火が着いてしまったのだ。


「待ちなよ、おばさん」


「おば……??」


言っても二十歳そこそこの小娘に、おばさん呼ばわりとはどういうことか。


けれど今は。
衰弱したハナを動物病院に連れていかないといけない。
一刻を争う。致し方なく言葉を飲み込んだ。


「通してください。お話しすることはありません」


けれど腕を掴まれた。見た目以上に力が強い。


「逃げんなよ!!人の男にちょっかい出しといて!!そっちになくてもこっちにはあるんだよ!!」


「痛いです、離して…」


「やめてくれよ!!お前のそういうところが嫌なんだ!!」


手も触れようとせず洸亮さんが叫ぶように吐き捨てる。


そんな言葉がほしくてやってるわけじゃないのに。そんな冷たい言葉を言われるためにこんなことをしてるわけじゃないはずなのに。


「………っ!!だってこーすけ!!」


見ていられなくなってしまった。というよりは、洸亮さんにとっては、どちらのことも同じ程度にしか見ていない。と、うすうす感じてしまった。