動物が苦手であろう洸亮さんには、出るまでのいっときとはいえ預けることも出来ないと、ハナを抱えたまま、黙って早足でクローゼットに向かう。


軽く探った先に、見慣れた私のリュックはあった。それを取り出そうとしたとき。


ふと、僅かな時間とはいえ、見慣れた仕事用のジャンパーが視界に入る。


―――胸が、ズキンとした。
もう会わない。
もう、逢えない。


「…お、お邪魔しました」


目を伏せて会わせることなく慌ててその場を立ち去る。
もう二度と会うこともないであろうこの人たちに。


そして私はリュックを手にすると、静かに部屋を飛び出した。