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何だこの小娘は。


董坂の父、冬至(トウジ)は、ぼんやりと光を放つ心花に見入ってしまった。


宗教にも超状現象にも関心など持ったことはない。


けれどなぜか、彼女からオーラのようなものが見えた。


―――今は亡き妻と出会ったとき以来だった。


もちろんそれは、運命の女性のそれではなく、けれど董坂家には必要なものとして冬至の目に見えたものだった。


そんなことがあるはずがない。
あってたまるか。


頭をブルブルっと振るとこめかみを押さえ、動揺を隠すように、


「な、なんでもない。行きなさい」


これ以上息子の好きにはさせまいと、桜に案内させて部屋を引き払いに来た冬至。


―――秘書だった桜を、ここで住まわせることをふと思い付いた矢先。


家に寄り付かない息子にも知らせていない。


病に侵されていた自分にはもう後がなく、身寄りのなかった彼女をせめて手元に置いておきたかった。息子の一番嫌うであろう桜をあえて息子の妻として。