「ハナ!!」


慌てて抱き上げ、頬を擦り寄せた。
ずいぶん冷えている。早く病院に連れて行かなくては。


けれどふと、人の気配に気付く。
先客がいた。見知らぬ年配の男性と婚約者さんだ。


「先客がいらっしゃいましたか」


警備服のオジサマが、どうしたものかと戸惑う。


スペアキーで入っているということはこちらは恐らく本当の身内ということになる。


「ちょっとあなた!!何してるの!?」


寄り添うように上着を脱いで寛いで、部屋から外を見ていたふたりが、ハッと振り向く。


「ね、猫を預けていたので引き取りに…」


「何でもいいから!!さっさと帰って!!」


邪魔しないで、という顔で睨む女性の隣で、男性が。


「…きみは、もしや…??」


まじまじと見つめる。
気に入らないように、女性が腕を取る。


「な、なんでもない。見なかったことにしてもらえまいか」


一体どういうことなのか。これは。
けれど、感じたことのない直感でこの人は、董坂さんのお父様だと思った。