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董坂財閥。


巨大な敷地に膨大な庭。
召し使いが10名。


先祖代々資産家で投資家もしていた。
家族に隠れて家を出、IT関連の起業をし、傍らでペットシッターの資格も取り、連絡を絶っていた。


この、金にものを言わせるような家系が心底嫌だった董坂。


鍵の掛けられた部屋に閉じ込められてしまっていた。
部屋の鍵が開けられ、父が顔を出した。


恰幅がよく白髪混じり。オーダーメイドのスーツを着こなしてはいるけれど、そこに品性は感じられなかった。


幼い頃から見てきた父は、あらゆるものを犠牲にし、踏み台にしてきた腹黒さしか、董坂には感じ取ることが出来なかった。


「式はグアムですることにした。いいな??櫻。式を終えるまでここから一歩も出さないから、そのつもりでいなさい」


じろりと父を睨む。
けれどそんなことでは堪えない。


「あんないいお嬢さんに嫁いで来てもらえるんだ。お前も年貢を納めなさい」


「僕の気持ちはお構いなしですか」


いるわけがないと言うように、ふふん、と笑うと、


「そうだな、よほどの女性を連れて来ない限りは認めるわけにはいかないな」


「…では連れて参りますのでここから出して頂けないですか」


「できない相談だね。もういい。そこでそうしていなさい」


ハッハッハと高笑いしながら部屋を後にした。


―――この男の支配下からは逃れられないのか。