「なん!?家に行ったってことか!?」


さらに動揺してしまう。
と、


「若様!!やっと見つけました!!こんなところにいらっしゃったんですか!?」


背後に車が入ってきた。
ベンツから下りてきたのは50代の上品さが滲み出る、スーツ姿の紳士だった。


白髪混じりの口髭を整えた、いわゆる執事のような。


「わかさま…???」


「…何しに来たんです」


このタイミングで、と顔をしかめた。


「…わかさまって…??」


「董坂財閥のご子息、櫻様です。帰りますよ、全く。こんなところでうろうろされては、お家の名に傷がつきます!!」


きつい口調で近寄ると、腕を掴もうとした。
けれど、いともあっさりと掴んだ腕を捻る。


「…このまま帰れるわけないでしょう」


目の前で。
何が起きているのか。


そして。
その姿を見て唐突に思い出した心花。


10年前に。
一度だけ。
会ってる。この人と。


―――でも。