唇に柔らかい感触を覚え、目を覚ました董坂。


「おはようのキス」


にっこりと微笑んだのは心花ではなく、婚約者の桜(サクラ)だった。


寝起きの頭でぼんやりする。


と、
ガバッと起き上がる。


「彼女は!?橘さんは……」


「あんなお子様、連れ込んじゃダメでしょう??犯罪者になっちゃうわ!?私がいるじゃない」


自分の人差し指で董坂の唇を塞ぐと、その指を放してまたキスをする。


今どき。
親が勝手に決めた女との結婚。


逃げて来たのに。
ずっと。


「……帰ってくれませんか」


「今日は、式の日程を決めようと思って。ハワイはありきたりよね」


「君とは結婚しません」


「ドレスはどのデザイナーにしようかしら」


うふふ、と意地悪に微笑む。
どうしたら。