「IT企業、[TOHSAKAーinternational]社長で董坂財閥、董坂櫻の婚約者です。あなたは??」


社長!?財閥!?どういうこと!?
何でそんなすごい人がこんなところでペットシッターなんてしてるの!?


「………っ!?私は」


婚約者がいたのだ。
それもそうか。この年齢で独り身は、ないか。


なんだろう。
心臓が痛い。締め付けられたように苦しい。
いや胸が。


きれいな人。


「わ、私は、えっと」


どう言えば。
同居人??


「お、お邪魔しました!!」


とにかくこの場から逃げ出したかった私は、財布の入った上着だけひっ掴むと外に飛び出してしまった。


―――そして。
訳もわからず涙が頬を伝っていた。